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page=75 :碑文の解読 恩徳碑 夫れ利を興して其の報を望まず。士君子尚且つ之難し。況農商に於いておや。農商にて此の行い有るは、君子と謂わざる可也。加賀国石川郡太平寺村に官林有り。其の樹蔭頗る耕稼を妨ぐ。まさに藩政の日、村民開墾し以て田と為すを請う。明治二年允を得る。時に村民貧弱にして支費能わず。以て憂会と為す。野々市駅に農水毛生伊余門有り、性任侠に富む。村民財をあずかり憫う。此の如く憤然開墾の事に任ず。一年を出ずして功なり、以て良田二千歩許を得る。伊余門即ち村民に曰く、国法開墾は地主の為。吾今当に地主と為る。然し汝等の窮故を憫み、以て地を汝に与える。宜しく歳歳耕耨、十年間米三石を以て余に報ず。村民欣躍、曰く唯命に従う。今茲に四月村民其の恩其の徳を思い、碑を建て以て其の事を紀さんと欲す。来りて余に文を請う。余其の義挙を嘉とし、君子に以たる有る故、銘と為す。 以て賛の銘に曰く 太平寺原 有樹榛々 一朝にして斬伐す 田畔鱗と成る 其の恩其の徳 永く列ね忘れず                            石川県第一師範学校教諭 永山太撰                                  石川県士族 岸秀實書