むかし、むかし。

 白山のふもとに弥平(やへい)という人が住んでいました。弥平は、いつの頃からか毎朝早く手取川を川づたいに金石の海辺まで歩き、ひとつの願がけをしていました。

 きょうも、朝早く暗がりに家を出て川づたいの道を急ぎ、ちょうど蓮花寺のお宮さんの所まで来ますと、白い着物を着て、白いひげをはやしたおじいさんに呼びとめられました。

 「これこれ。弥平や。お前は毎朝早く一日も休まずに、海辺まで何をしに行くのじゃ。」

 と、静かに聞きました。

 「はい。わたしは、ひとつの願いごとをかなえるために、こうして毎朝、海辺まで行くのです。」

 「そうか。それでは、わたしがその願いをかなえてやろう。そうじゃな。三年の間、毎日ここまで願がけに来るのじゃ。」

 弥平は、じっとおじいさんを見つめました。だんだんおじいさんの姿は、神様に見えはじめました。とたんに弥平は、地面に座り、両手をついていいました。

 「神様。どうかわたしの願いをかなえてください。かなえてくだされば、お宮さんの鳥居をたてることをお約束します。」

 

 三年の間、弥平は雨の日も一日も休まず、海辺まで願かけに行きました。そして、とうとう願がけがかなえられました。

 弥平は、約束どおり「所願成就」と書いた小さな木で作った鳥居をお宮さんに奉納しました。

 今でも、蓮花寺のお宮さんには、ご神体といっしょに納められているとのことです。

郷土の民話・伝説集