弘法(こうぼう)大師は、教(おしえ)を広めるために全国を歩いてまわられておりました。そして、たまたま上新庄(今の新庄二丁目)に立ち寄られたのです。

 村には、たくさんの子ども達が遊んでおりました。弘法大師は子ども達に、いろいろなことを聞かれるのですが、子ども達は何にも知らないのです。また、大人の人達も文字を書くことはもちろん、神さまや仏さまのことも全く知りません。弘法大師は村人達が何も知らないのにおどろき、学問の大切さや必要であることを教えられたのです。そして帰りがけに、かたわらにあった大きな石に「学」(まなぶ)という字をきざまれたのです。それからというものは、村人達は、この石を「弘法の手つき石」といって学問にはげんだということです。今から二〇〇年程前、村の人々は、この石が田んぼのまん中にあったのを、お宮さんに奉納したそうです。今でも、お宮さんの境内に立石として保存され、手をついたあとと、「学」の文字の下の方と思われる形のあとが見うけられます。

郷土の民話・伝説集