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page=63 :そらく、寺院建立にかかる時間が長かったため、製作者が徐々に交代していったのだと思いま
す。古い段階のものは分厚い傾向があり、新しいものは薄くなっているようです。また、新し
いものの中には、カキ目と呼ばれる板状具でなでつけた調整が加わっています。a 系統の平瓦
は3種類程度に分類されますが、交代の度に製作技術まで変化することはなく、末松廃寺独特
の製作技法を守り続けました。
(3)末松廃寺系瓦の伝播
末松廃寺系軒瓦は、加賀市弓波廃寺に伝播しています。弓波廃寺では、a 系統で細い弁の軒
丸瓦が伝わっています。平瓦もa 系統の古いものが伝わっています。この他、富山県などい
くつかの遺跡でa 系統平瓦とよく似た平瓦が確認されていますから、各地に伝播した可能性
があります。加賀で最古の瓦ですから、末松廃寺のa 系統の瓦屋は、中核的な役割を果たし
たと考えられます。
また、西井龍儀氏の研究によると、末松廃寺系の塔心礎が、加賀市弓波廃寺や若狭・能登・
越中に伝播しています。弓波廃寺は軒丸瓦・平瓦も末松廃寺系ですから、よほど関係が深かっ
たのだと思います。その他の寺院では、瓦と心礎は無関係のようですから、瓦を造る人と心礎
を造る人は別々だったと思われます。
古代寺院を建立するには、今までにはなかった最先端の技術が必要になってきますから、各
地の豪族は協力しあって寺院を建立したと思われます。末松廃寺系技術が各地に伝播したのは、
そのためでしょう。末松廃寺を建立した氏族が、最先端の技術を各地の豪族に提供したのだと
思います。