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page=69 :いい商品で儲けよう、 品質と利益を両立させよう。 伊藤好男 一九六九年生まれ。石川県農業短期大学卒業、一般企業に四年間勤務、四年前に就農。 [完熟トマト組合]に参加し、他にはメロン、柿、水稲を両親、祖母とともに栽培。野々市町下林在住。 「机の上で計算していると、ハウスを増やして人を雇い規模を拡大して儲けたいと野望が広がる。でも人任せにして、自分で責任を持てないトマトやメロンは出荷したくない。品質は下げたくないと思う」。  農業短大での卒論[農家の経営調査]では利益率など無縁、丼勘定が当たり前の時代に、数字に明るく先を見る父の経営を知った。工具会社の4年間で厳しい企業間競争を知った。 「だから僕は計算が先に立つ。でも同じ儲けるなら、いい商品で儲けたい。品質と利益の両立をめざしたい」という。  サラリーマンからの転職にあたり、新たに190坪程度のハウスを増設した。「ちょっと少ないと思われるかも知れませんが、それまでの両親が忙しすぎる面もあり、そのカバーをしているというのが現状です。もちろん、品質への“こだわり”も考えてのことです」。  10年前から加入している[完熟トマト組合]では、それぞれが品質を競いながら、共同出荷による安定価格をめざしてきた。組合の信用を支える品質を維持するため、箱にはすべて生産者番号を記し、誰がつくったトマトかわかるようになっている。同じ仲間とはいえ負けたくない、だから組合の勉強会にも参加する。  「完熟トマト組合では定期的に会合がありますが、柿やメロンは個人で直接市場へ出荷しているのでほかの生産者や消費者とのつながりは、ほとんどありません。なんだか孤立しているようで不安」。  かつて富奥地区には農事組合法人・七八園芸組合があった。七転び八起きだから七八園芸。他人に頼らず自分達の力でやろうという組合である。自分達でやるのが当たり前という意識は今も続いている。そのひとつが直販である。直販は近郊農業ならではの立地条件をフルに活用できる。「今のところ、近所の人が買いに来てくれる程度の直販ですが、それは大きな励みとなっています」。  虫の発生や消毒時の苦情など、田畑と住宅が隣接する都市近郊農業には問題も沢山ある。しかし農産物が結ぶ地域の人々との交流など、都市と農業の共存を支える根は、少しずつ伸び始め