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==二、民謡・俗謡==
富奥音頭
昭和二十九年十一月
富奥公民館選定
大原善衛 作曲
一、鍬を振ったほ 昔の夢よ 今じゃ機械で鼻歌で
二、娘揃って 早苗を植えりや かけたたすきが 緋ともえる
三、昇る朝日に 機械のリズム さした野花の アクセサリ
四、空は秋晴れ 黄金の穂波 刈る手も軽く 穂は重い
五、情厚けりゃ 穂に穂が咲くよ 富奥よいとこ 米どころ
六、うたえおどれよ 富奥音頭 老いも若きも 朗らかに
ソレ ヨイヨイ ヨーイト ヤレコノセ
ヨイヨイ ヨーイト ヤレコノセ
富奥じょんから
ハアー ちょいと借りましょう 憚りながら
声の悪いこと アリャ 御免なれ
ハアー 声はすれども 姿は見えぬ
花の草場の アリャ きりぎりす
ハアー 来たり来なんだり 夏川の水
だれがかしらで アリャ とめるやら
ハアー 梅の匂いを 桜に持たせ
花を柳に アリャ 持たせたい
ハアー 主が主なら わたしもわたし
浮気するなら アリャ 柴にする
ハアー 日出た目出たの 若松様よ
枝も栄える アリャ 葉もしげる
ハアー さいた盃 中見てあがれ
中は鶴亀 アリャ 五葉の松
ハアー 米のなる木で 作りし草鞋
踏めば小判の アリャ 跡がつく
ハアー ままよ捨ておけ 僅かの婆婆よ
好き事なら アリャ するがよい
ハアー うたえうたえと せきたてられて
唄は出もせず アリャ 汗が出る
ハアー 唄は声より こなしが大事
娘器量より アリャ 気が大事
ハアー 山で赤いもの 躑躅か椿
まだも赤いもの アリャ 猿の顔
ハアー 山で山吹 田圃で野菊
花が咲いても アリャ 実がならぬ
ハアー 踊る若衆も あんにゃま達も
唄の切れ間にゃ アリャ 囃子を頼む
ハアー 盆や祭に 踊らぬ者は
顔がしゃくしか アリャ いもくしか
ハアー 娘島田に 蝶々がとまる
とまる筈だよ マリャ 花じゃもの
ハアー 娘十八 番茶も出ばな
鬼も十八 アリャ 蛇もはたち
ハアー 娘ァ子でない 嫁こそ子なり
娘ア他国の アリャ 人の子じゃ
ハアー 竹になりたや 尺八に
末はフウフウと アリャ 鳴るわいな
ハアー 私しゃどうでも 貴方のままよ
枝垂れ柳は アリャ 風のまま
ハアー いやじゃいやじゃと 畠の芋は
かぶりふりふり アリャ 子ができる
ハアー 親は子につく 子は親につく
麦のおちらしゃ アリャ あごにつく
地がち唄
どうなたこなたも 張り込んで頼む ヨーイヨイ
ここは大事な主柱 アリャエーンヤ エーンヤノサーッサノ ヨーイヨイ
こーんの館は めでたい館(以下囃子省略) 鶴が御門に巣をかけた
咲いた桜に 何故駒つなぐ 駒が勇めば花がちる
桜三月 あやめは五月 私の心は二三月
大事大事は どこでもござる ここは大事な主柱
親の意見と なすびの花は 千に一つのあだがない
地がちするのも 御生願うも 末のためじゃと思やこそ
もみすり唄
ハアー 日は縞臼 相手まは殿ま イヤコラーサト 臼の軽さや 面白や イヤコラーサト
ハアー 臼をすりゃこそ 殿まと庭に イヤコラーサト 声を限りと 夜なべする イヤコラーサト
ハアー 今年ゃ豊年だよ 穂に穂が咲いて イヤコラーサト 枡がいらいで 箕でほかる イヤコラーサト
ハアー 紺の前掛けに 松葉のちらし イヤコラーサト まつにこんとは つらいもの イヤコラーサト
ハアー なんば泣いても 我が児の泣くは イヤコラーサト お花畑の 蝉のこえ イヤコラーサト
ハアー お台所と 百姓のにわは イヤコラーサト いつもドンドと なるがよい イヤコラーサト
ハアー わしの心と 大乗寺山は イヤコラーサト ほかに木はない まつばかり イヤコラーサト
ハアー わしの心と はくさん山は イヤコラーサト いつも心が とけやせぬ イヤコラーサト
ハアー さしたからかさ ろくろでしまる イヤコラーサト わたしゃあんたの 気でしまる イヤコラーサト
ハアー はたちすぎ出りゃ 奥山躑躅 イヤコラーサト 咲いておれども 見てがない イヤコラーサト
ハアー 三度咲きやこそ 吉野の桜 イヤコラーサト 一度咲いたら 山ざくら イヤコラーサト
ハアー 朝日、橘 八日の祭 イヤコラーサト 雨の降らぬは まれーなり イヤコラーサト
箪笥かき唄 (長持唄)
日出度目出度の若松様よ 枝も栄えりや葉もしげる
枝も栄えて葉もしげりやこそ 人は若松様という
目出度目出度が三ツ重なれば 庭にゃ鶴亀五葉の松
あんさ喜べ今来る嫁は 黒肌自慢で背が高い
あんさうれしや今来るかかは 仕事ァ上手で気だてよい
お前百までわしゃ九十九まで 共に白髪のはえるまで
嫁と姑のあい杯は 命長かれ仲良かれ
粉ひき唄
五升挽きゃ婆ァは三升じゃとおっしゃる 量り直してお目にかけよう
細こう挽けとは一升か二升 細こう挽かりょか五升六升
案じやんすなそりゃ稲の花 米のほの字がままとなる
ものきゃ物挽けてきなきゃ休め 棚に団子ァある食て休め
山のばんばの物挽きゃいやじゃ 臼にひざぶしべたべたと
とりが鳴いてもまだ夜が明けん 明けりやお寺の鐘が鳴る
宵の明星を夜明と思うて 殿まもどいたが今くやし
世間渡るに豆腐で渡れ まめで四角でやわらかで
竹と雀は仲良いけれど 切ればえさしの仇竿
竹になりたやはちくの竹に 元は尺八、中は笛
いつもこの家のしまい時きゃ遅て いとし殿まが垣内に立つ
わたしゃ唄好き念仏嫌い 死出の山路を唄で越す
さわざ唄(都々逸文句)
洒さえ呑みァただ身は裸でも 綾や錦を着た思い
酒も煙草も好きならお召し 下戸の建てたる蔵はない
酒という字は三水偏に酉 酔がまわれはうたい出す
呑めや騒げよ一寸先ァ闇よ 今朝も菰着た人が来た
お酒呑む人心から可愛い 呑んでくだまきゃなお可愛い
男外に出りゃほれられしゃんせ そしてほれずに帰りゃんせ
あなたばかりと定めておれど 浮気ゃその日の出来心
雄蝶女蝶の盃よりも 好いた同志の茶碗酒
嫌なお方の親切よりも 好いた男の無理がよい
あじさいはきれいな花だが七色変わる どれがまことの花じゃやら
月が仲人で結んだ仲は 時々欠けても丸くなる
好きなお方は手元へ寄らず 払う蚊が来て身をせめる
惚れたお方を横目で見つつ 嫌な男の機嫌とる
にくらしいよと横目で見つつ 可愛いと言いそなつめり様
思い切ろうと思うて逢うて 逢うて思いが増すばかり
罪な方だよ罪ないわたしに 罪をつくらす罪な人
可愛ゆて可愛ゆて可愛ゆてならぬ のどがかわゆて水ほしい
咲いた桜に手はとどけども よその花故見てくらす
遠目よけれど地肌の悪さ 年増化粧と富士の山
わが物と思うているのに疑い深い とけておくれよ笠の雪
ほれていりやこそいいだしにくい あなたの手だしを待つつらさ
招く蛍は手元へ寄らず 払う蚊が来て身をせめる
よせばよいのに舌切雀 チョイとなめたが身のつまり
昼は人目を忍んで居れど 暮れるとひそかに来る蛍
塀をのり越え手を出すへちま よそで浮気の花咲かす
表向きには枯木と見せても 裏で咲かせる藤の花
尼寺に色気話はないかと思ゃ 今朝も衣の色話
大海の水呑んでても鰯は麟 泥水呑んでも鯉は鯉
魚籠にとまる烏はそりゃ後家鳥 ととを求めて泣くわいな
ほれていていてほれないふりを していてほれてる身のつらさ
背中そむけて寝ていたはずに いつさせたやら手枕を
二人寝の一人かえせば一人が二人 一人淋しく二人寝る
真の夜中にふと目をさまし 残る枕がしゃくの種
年をとったはお互い様よ 若い心で暮らしましょう
明の鐘ゴーンとなる頃三ヵ月形の くしが落ちてる四畳半
はなればなれに寝ていたはずに いつさせたやら手枕を
かたい蕾も一夜の内に ぬれてほころぶ床の中
こたつで酒のみゃ浜辺の遊び 足で貝掘ることもある
紙入れ出したでしめたと思や 紙は紙だが鼻をかむ
色にほだされ採ってはみたが 嫌になったよ渋い柿
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富奥郷土史