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==(三)農業協同組合法の制定==
1、農業協同組合法の成立過程
連合軍総司令部から発せられた「農地改革についての覚書」の中の「小作人であった者が再び転落しないための合理的保護の規定」の中で
1、長期および短期の農業融資の利用
2、加工業者および配給業者による搾取からの農民の保護
3、農産物価格の安定
4、農民に対する技術的その他の知識の普及
5、非農民的勢力の支配を脱し、日本農民の経済的、文化的
向上に資する農協運動の助長、奨励
という五点をもって「農業協同組合法」の制定が促された。
昭和二十二年十一月に「農協法」の公布を見るまでに、七回にわたって法案の書き替えが行われた。第一次案から第三次案まではもっぱら系統農業会の再編成を思わせるものであったため、連合軍総司令部のいれるところとならず、民主主義の強力な貫徹を要求されて、第四次案以降の農協法案は内容を一変した。それに盛り込まれた精神は
1、自由の原則
2、農民主体性の確立
3、生産に関する事業の強化
4、行政庁の監督権の制限
を主内容とするものであったが、当時の関係者にはこの精神の実践的な理解に到達することは容易でなかった。そのため「農協法」の成立には一年半という長い年月を要した。
2、農協法の制定
昭和二十二年十一月九日に「農協法」は公布をみた。連合軍総司令部のまびしい追及によって、旧来の農業会的な要素はいっさい排除されて、自由と民主主義の理念をほぼ全面的に盛り込んで生まれた「農協法」は、おおよそ次の内容を骨子とした。
1、組合員については農民にのみ正組合員の資格を与え、農民でないものは準組合員としての加入しか認めず、その権利を制限した。
2、出資組合と非出資組合をそれぞれ単位農協(単協)と連合会について認め、出資組合はすべて有限責任とした。
3、農協の地区は自由とし、その設立も自由とした。
4、事業選択の自由については、単協においては事業種類の全部あるいは一部を、自由に行えるようにした。ただし、連合会については信用事業を行う連合会は、他の事業を行うことを禁止している。
5、組合員の権利と組合の民主的運営についての諸規定を設置している。
3、農業会の解体と民主化
農業会の解体と民主化は占領直後から連合軍総司令部の政策として促進された。昭和二十年十二月、農業団体法の一部改正が行われて、役員制度の民主化や行政庁の監督権縮小の方向が明らかにされ、翌二十一年に全国農業会の役員総改選が行われた。
農業会の民主化は役員選出の民主化の面であるていど成果を上げ、農民運動の台頭と農業会職員組合による農業会民主化運動も激烈をきわめた。
他方、農業会の経営上の危幾は、深刻なものとなっていった。政府は予算の縮小にともなって、農業会に対する政府補助の多くを打ち切り、インフレの進行によって人件費やその他の事業費はふくらみ、赤字は増大するばかりであった。
昭和二十二年、「農協法」と同時に「農業協同組合法の制定にともなう農業団体の整備等に関する法律」が公布され、農業会は解散の運びとなった。
4、農業協同組合の設立
1、単位農業協同組合の設立
農業復興会議内に設けられた農業協同組合組織協力本部は昭和二十三年一月「農業協同組合の設立に関する意見」において総合農協(組織、農協)中心主義と、信用事業兼営の方針を明らかにした。これによって増加しつつある町村農協の大部分は信用事業を行う総合農協の形をとるに至り、四月にはその数四、二五六組合、六月には一四、〇一二組合におよび、短期間にほば全国の農村において設立完了を見るに至った。
2、府県連合会の設立
昭和二十三年六月、農林省は連合会における信用事業、購買事業、生産に関する事業、共済事業、厚生事業の兼営を禁止した。府県連合会の設立はこの年の七月から九月にかけて進められ、十二月末には三百八十五の連合会を数えた。
これらの中には専門農協の連合会も多数ふくまれているが、信用農業協同組合連合会(信連)販売農業協同組合連合会(販連)指導農業協同組合連合会(指導連)厚生農業協同組合連合会(厚生連)などは、総合農協を会員としている。
府県連合会の設立は農業会の解散より早めに進められ、この過程で畜産農業協同組合連合会、園芸農業協同組合連合会などの専門農協連合会も、総合農協とはやや離れた立場で設立された。
3、全国連合会の設立
昭和二十三年一月、全国農業協同組合連絡協議会が設立されて、農協組織協力本部の事業を継承することとなった。その目的は総合農協の全国的組織体の結成にあり、ここで全国指導農業協同組合連合会(全指連)全国販売農業協同組合連合会(全販連)全国購買農業協同組合連合会(全購連)の設立方針が定められ、信用事業は農林中央金庫(農林中金)をもって中央機関とすることが決定された。
十月二十五日には全販連、全購速、十一月九日に全指連の設立認可が得られ、それぞれ府県連合会を構成員として発足した。
全国厚生農業協同組合連合会(全国厚生連)全国運輸農業協同組合連合会(全運連)などもこれについで設立された。また全国農村工業農業組合連合会、全国新聞情報農業協同組合連合会(新聞連)日本農機具購買農業協同組合連合会(農機具連)などの設立もみられるが、農機具連はほとんど全購連に吸収された。
以上は総合農協を組織団体とするものであるが、専門農協の連合会として養蚕、畜産、園芸の全国連もそれぞれ設立された。
5、農民組織十六原則
農協法が制定され、各地における農協設立が一段落した昭和二十三年十二月二十一日、連合軍総司令部は極東軍事委員会が決めた農民組織に関する十六原則を発表した。
これは各地で農協の設立があったものの、農業全財産の引き継ぎなどから、農業会の「看板の塗り替え」という批判の声も強く、旧地主層による農協の支配を排除せんがためのものといわれる。
この十六原則は真に民主的な農民組織の醸成を企図し、かつての封建的組織の支配による農協の運営をおもんばかったもので、自由にしてしかも自主的な農民経済の基盤を自らの手によって作り上げていく意図を明らかにしたものごある。しかもその結果として、長年にわたる経営の練達者が数多く農協の運営から離脱したため、経済九原則の実施により統制恐慌下における運営に大きな支障を来たし、再建整備に狂奔しなければならない実情を招いたことも否めない。
しかし、これら公職追放による農協役員不就任の厳命も、その後三年を経ずして解除され、役員の改選なごによって徐々に復帰した。といっても、これらの事象は農協運営の基本的な、創成期におけるきわめて大きな影響を与えた指令であったといえる。
農民組織に関する十六原則(昭和二十三年十二月二十一日、極東委員会)
〔一般原則〕
1、日本の農民は相互の経済的、社会的利益のため、また農業労働の条件を維持改善し、その他農民の正当な利益を助長するため、あらゆる種類の組合および協同組合をふくむ農民の団体を結成することを奨励されるべきである。
2、農民の団体および構成員は、その運営上日本国憲法第三章「国民の権利および義務」に保障された基本的自由を確保されるべきであり、またこれを遵守するよう奨励すべきである。
3、本政策の条項に反する現行法律またはその一部はすべて廃棄すべきであり、またこれらの法律によって設置された一切の団体は解散すべきである。
4、本政策は日本の当面の経済的諸要求および食糧統制措置の不必要な混乱をさける必要に対して、正当な考慮を払いながら徐々に実施されるべきである。
〔農業協同組合〕
5、農業協同組合は実際に農地の上で作業に従事することによって生計を営む者、またはその作業に密接な関係にある業務にたずさあるものが、相互の利益のために結合し得る手段であるべきである。
6、農民が自ら協同組合を組織する権利は法律によって保障され、保護されるべきである。また、農民の協同組合に対する参加、あるいは不参加の自由も、法律によって規定されるべきである。各協同組合は純粋の農民以外の者を組合員として認め、これに対し表決権を与えるか否かについても、規定を作る権限を持つべきである。ただし、協同組合が金融、商業、工業、その他すべての農民以外の勢力の支配を受けることを防止する措置を講すべきである。
7、農業協同組合はそれ自体の農業活動および組合員のためにする一切の経済活動を行うにあたり、いかなる不利な差別的課税その他の差別的制限をも加えられるべきでない。
8、農業協同組合は法人に関する法律には服すべきである。しかし、その内部運営と事業活動については、日本政府のいかなる行政機関からも統制、干渉または監督を受けてはならない。また、行政命令によって解放されることがあってはならない。協同組合が法律、定款、規約に違反した場合における救済措置は法廷を通じてのみ講ぜられるべく、政府の命令または行政措置によって請ぜられてはならない。
9、農業協同組合は政府のとる措置に対して、日本の統治下にある他のあらゆる日本国民または団体と同程度に服従すべきであるが、右以外には政府の実施する措置に対し、いかなる参加の義務も、またいかなる責任も負わさるべきでない。
10、日本政府は農業協同組合員に対して、民主的手続きを理解させるための一般的教育ならびに組合の実務、農業技術に関する特別な教育を行うにあたって、これを奨励し、援助すべきである。日本政府は組合の役職員が外国の協同組合に関する情報を入手するためだけの援助を与えなければならない。紙の供給割り当て、外国刊行物の輸入割り当てを行うときは、これらの事項に対し正当な考慮を払わなければならない。
11、日本国民は自分達の協同組合の組織形態の選択の自由を与えられるべきである。協同組合は各組合員の組合員教に応ずる比例代表制によって、地域的または全国的団体を結成することを許されるべきである。ただし、日本農業協同組合運動の将来の発展のためには、強固な単位組織の確立が重要であることが強調されねばならない。
12、農業協同組合の事務職員を除き、その理事と役員とは、定期的に組合員である農民の秘密投票によって、民主的に選挙されねばならない。全組合員に各一票の投票権を与えなければならない。協同組合の一切の活動が民主的になされるようにすることは、組合員自身の責任である。
13、次の組合員は役員に職を持つことができない。
イ、協同組合の活動と実質的に競合関係に立つ恐れのある活動に従事している者。
ロ、昭和二十一年一月四日付公職追放令および、その後総司令部から発せられた公職追放関係各指令の該当者。
14、日本政府は可能な限りにおいて、農業協同組合に対し、技術的、助言的その他のサービスを提供し、また、組合が適正な条件で融資を受けることができるようにすべきである。
15、農業協同組合は占領目的を促進するような自発的運動に参加するよう奨励すべきである。
〔農民組合〕
16、日本労働組合に関する諸原則は、必要な修正を行ったうえ、農民組合にも適用されるべきである。
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1、農業協同組合法の成立過程
連合軍総司令部から発せられた「農地改革についての覚書」の中の「小作人
であった者が再び転落しないための合理的保護の規定」の中で
1、長期および短期の農業融資の利用
2、加工業者および配給業者による搾取からの農民の保護
3、農産物価格の安定
4、農民に対する技術的その他の知識の普及
5、非農民的勢力の支配を脱し、日本農民の経済的、文化的
向上に資する農協運動の助長、奨励
という五点をもって「農業協同組合法」の制定が促された。
昭和二十二年十一月に「農協法」の公布を見るまでに、七回にわたって法案
の書き替えが行われた。第一次案から第三次案まではもっぱら系統農業会の再編
成を思わせるものであったため、連合軍総司令部のいれるところとならず、民主
主義の強力な貫徹を要求されて、第四次案以降の農協法案は内容を一変した。そ
れに盛り込まれた精神は
1、自由の原則
2、農民主体性の確立
3、生産に関する事業の強化
4、行政庁の監督権の制限
を主内容とするものであったが、当時の関係者にはこの精神の実践的な理解
に到達することは容易でなかった。そのため「農協法」の成立には一年半という
長い年月を要した。
2、農協法の制定
昭和二十二年十一月九日に「農協法」は公布をみた。連合軍総司令部のまび
しい追及によって、旧来の農業会的な要素はいっさい排除されて、自由と民主主
義の理念をほぼ全面的に盛り込んで生まれた「農協法」は、おおよそ次の内容を
骨子とした。
1、組合員については農民にのみ正組合員の資格を与え、農民でないものは準
組合員としての加入しか認めず、その権利を制限した。
2、出資組合と非出資組合をそれぞれ単位農協(単協)と連合会について認め、
出資組合はすべて有限責任とした。
3、農協の地区は自由とし、その設立も自由とした。
4、事業選択の自由については、単協においては事業種類の全部あるいは一部
を、自由に行えるようにした。ただし、連合会については信用事業を行う連合会
は、他の事業を行うことを禁止している。
5、組合員の権利と組合の民主的運営についての諸規定を設置している。
3、農業会の解体と民主化
農業会の解体と民主化は占領直後から連合軍総司令部の政策として促進され
た。昭和二十年十二月、農業団体法の一部改正が行われて、役員制度の民主化や
行政庁の監督権縮小の方向が明らかにされ、翌二十一年に全国農業会の役員総改
選が行われた。
農業会の民主化は役員選出の民主化の面であるていど成果を上げ、農民運動
の台頭と農業会職員組合による農業会民主化運動も激烈をきわめた。
他方、農業会の経営上の危幾は、深刻なものとなっていった。政府は予算の
縮小にともなって、農業会に対する政府補助の多くを打ち切り、インフレの進行
によって人件費やその他の事業費はふくらみ、赤字は増大するばかりであった。
昭和二十二年、「農協法」と同時に「農業協同組合法の制定にともなう農業
団体の整備等に関する法律」が公布され、農業会は解散の運びとなった。
4、農業協同組合の設立
1、単位農業協同組合の設立
農業復興会議内に設けられた農業協同組合組織協力本部は昭和二十三年一月
「農業協同組合の設立に関する意見」において総合農協(組織、農協)中心主義
と、信用事業兼営の方針を明らかにした。これによって増加しつつある町村農協
の大部分は信用事業を行う総合農協の形をとるに至り、四月にはその数四、二五
六組合、六月には一四、〇一二組合におよび、短期間にほば全国の農村において
設立完了を見るに至った。
2、府県連合会の設立
昭和二十三年六月、農林省は連合会における信用事業、購買事業、生産に関
する事業、共済事業、厚生事業の兼営を禁止した。府県連合会の設立はこの年の
七月から九月にかけて進められ、十二月末には三百八十五の連合会を数えた。
これらの中には専門農協の連合会も多数ふくまれているが、信用農業協同組
合連合会(信連)販売農業協同組合連合会(販連)指導農業協同組合連合会(指
導連)厚生農業協同組合連合会(厚生連)などは、総合農協を会員としている。
府県連合会の設立は農業会の解散より早めに進められ、この過程で畜産農業
協同組合連合会、園芸農業協同組合連合会などの専門農協連合会も、総合農協と
はやや離れた立場で設立された。
3、全国連合会の設立
昭和二十三年一月、全国農業協同組合連絡協議会が設立されて、農協組織協
力本部の事業を継承することとなった。その目的は総合農協の全国的組織体の結
成にあり、ここで全国指導農業協同組合連合会(全指連)全国販売農業協同組合
連合会(全販連)全国購買農業協同組合連合会(全購連)の設立方針が定められ、
信用事業は農林中央金庫(農林中金)をもって中央機関とすることが決定された。
十月二十五日には全販連、全購速、十一月九日に全指連の設立認可が得られ、
それぞれ府県連合会を構成員として発足した。
全国厚生農業協同組合連合会(全国厚生連)全国運輸農業協同組合連合会
(全運連)などもこれについで設立された。また全国農村工業農業組合連合会、
全国新聞情報農業協同組合連合会(新聞連)日本農機具購買農業協同組合連合会
(農機具連)などの設立もみられるが、農機具連はほとんど全購連に吸収された。
以上は総合農協を組織団体とするものであるが、専門農協の連合会として養
蚕、畜産、園芸の全国連もそれぞれ設立された。
5、農民組織十六原則
農協法が制定され、各地における農協設立が一段落した昭和二十三年十二月
二十一日、連合軍総司令部は極東軍事委員会が決めた農民組織に関する十六原則
を発表した。
これは各地で農協の設立があったものの、農業全財産の引き継ぎなどから、
農業会の「看板の塗り替え」という批判の声も強く、旧地主層による農協の支配
を排除せんがためのものといわれる。
この十六原則は真に民主的な農民組織の醸成を企図し、かつての封建的組織
の支配による農協の運営をおもんばかったもので、自由にしてしかも自主的な農
民経済の基盤を自らの手によって作り上げていく意図を明らかにしたものごある。
しかもその結果として、長年にわたる経営の練達者が数多く農協の運営から離脱
したため、経済九原則の実施により統制恐慌下における運営に大きな支障を来た
し、再建整備に狂奔しなければならない実情を招いたことも否めない。
しかし、これら公職追放による農協役員不就任の厳命も、その後三年を経ず
して解除され、役員の改選なごによって徐々に復帰した。といっても、これらの
事象は農協運営の基本的な、創成期におけるきわめて大きな影響を与えた指令で
あったといえる。
農民組織に関する十六原則(昭和二十三年十二月二十一日、極東委員会)
〔一般原則〕
1、日本の農民は相互の経済的、社会的利益のため、また農業労働の条件を維
持改善し、その他農民の正当な利益を助長するため、あらゆる種類の組合および
協同組合をふくむ農民の団体を結成することを奨励されるべきである。
2、農民の団体および構成員は、その運営上日本国憲法第三章「国民の権利お
よび義務」に保障された基本的自由を確保されるべきであり、またこれを遵守す
るよう奨励すべきである。
3、本政策の条項に反する現行法律またはその一部はすべて廃棄すべきであり、
またこれらの法律によって設置された一切の団体は解散すべきである。
4、本政策は日本の当面の経済的諸要求および食糧統制措置の不必要な混乱を
さける必要に対して、正当な考慮を払いながら徐々に実施されるべきである。
〔農業協同組合〕
5、農業協同組合は実際に農地の上で作業に従事することによって生計を営む
者、またはその作業に密接な関係にある業務にたずさあるものが、相互の利益の
ために結合し得る手段であるべきである。
6、農民が自ら協同組合を組織する権利は法律によって保障され、保護される
べきである。また、農民の協同組合に対する参加、あるいは不参加の自由も、法
律によって規定されるべきである。各協同組合は純粋の農民以外の者を組合員と
して認め、これに対し表決権を与えるか否かについても、規定を作る権限を持つ
べきである。ただし、協同組合が金融、商業、工業、その他すべての農民以外の
勢力の支配を受けることを防止する措置を講すべきである。
7、農業協同組合はそれ自体の農業活動および組合員のためにする一切の経済
活動を行うにあたり、いかなる不利な差別的課税その他の差別的制限をも加えら
れるべきでない。
8、農業協同組合は法人に関する法律には服すべきである。しかし、その内部
運営と事業活動については、日本政府のいかなる行政機関からも統制、干渉また
は監督を受けてはならない。また、行政命令によって解放されることがあっては
ならない。協同組合が法律、定款、規約に違反した場合における救済措置は法廷
を通じてのみ講ぜられるべく、政府の命令または行政措置によって請ぜられては
ならない。
9、農業協同組合は政府のとる措置に対して、日本の統治下にある他のあらゆ
る日本国民または団体と同程度に服従すべきであるが、右以外には政府の実施す
る措置に対し、いかなる参加の義務も、またいかなる責任も負わさるべきでない。
10、日本政府は農業協同組合員に対して、民主的手続きを理解させるための一
般的教育ならびに組合の実務、農業技術に関する特別な教育を行うにあたって、
これを奨励し、援助すべきである。日本政府は組合の役職員が外国の協同組合に
関する情報を入手するためだけの援助を与えなければならない。紙の供給割り当
て、外国刊行物の輸入割り当てを行うときは、これらの事項に対し正当な考慮を
払わなければならない。
11、日本国民は自分達の協同組合の組織形態の選択の自由を与えられるべきで
ある。協同組合は各組合員の組合員教に応ずる比例代表制によって、地域的また
は全国的団体を結成することを許されるべきである。ただし、日本農業協同組合
運動の将来の発展のためには、強固な単位組織の確立が重要であることが強調さ
れねばならない。
12、農業協同組合の事務職員を除き、その理事と役員とは、定期的に組合員で
ある農民の秘密投票によって、民主的に選挙されねばならない。全組合員に各一
票の投票権を与えなければならない。協同組合の一切の活動が民主的になされる
ようにすることは、組合員自身の責任である。
13、次の組合員は役員に職を持つことができない。
イ、協同組合の活動と実質的に競合関係に立つ恐れのある活動に従事している
者。
ロ、昭和二十一年一月四日付公職追放令および、その後総司令部から発せられ
た公職追放関係各指令の該当者。
14、日本政府は可能な限りにおいて、農業協同組合に対し、技術的、助言的そ
の他のサービスを提供し、また、組合が適正な条件で融資を受けることができる
ようにすべきである。
15、農業協同組合は占領目的を促進するような自発的運動に参加するよう奨励
すべきである。
富奥郷土史