メニューに戻る

第十章 経済厚生と一村一心
(粟田トマトの栽培と加工場)
目次へ

<< part3へ [part4]

==粟田トマトの栽培と加工場==

 

第四節 粟田トマトの栽培と加工場

 一、所在地  富奥村粟田新保ロ一四一

 二、組合の名称 富奥村農産物加工組合

 三、組合員数 十二人

 四、利用戸数 五十戸

 五、共同利用設備

  共同作業場  構造木造平屋建  間口九間半(一七・二?)奥行四間二分(七・〇?)この建築費総額九百十円也

 六、設備農具の名称・数量・価格

 バルバー一、一六〇円、スカルダー一、一二〇円、打栓機一、三七円、釜一、一七円、釜台一、三五円、桶一、五一九円五〇、鍋四、六円クッカーコイル一、一二〇円、石油発動機一、一四〇円、荷車一、六〇円、濾過ポンプ一、六五円、什器四、二五円、計八〇四円五〇銭

 七、昭和九年度収支決算

  収入の部

 1組合費  三六〇円 組合員一名三〇円宛、十二人分

 2トマトソース売上代一、〇八円九〇 ソース一万六千三百三十七本売上代

 

 3トマトケチャップ売上代 三五六円一一 トマトケチャップ千五百六十三本

  売上代

 4繰越金  三三円五九   前年度繰越高

 5雑収入  一一円二七  不用品払下代金等

  計    一七九九円九〇

  支出の部

 1事務費 六円一〇 消耗品、通信費等

 2会議費 二二円一四

 3機械器具代 四五円八一 秤、バケツ、ざる、桶等

 4原料代 三四七円六〇 生トマト五千七百九十二貫仕入代

 5調味料代 六〇円 ソース用四円五十銭、ケチャップ用五十五円五〇銭

 6燃料費 九九円七九  薪二千十八貫代八十七円五十四銭、油代十二円二十五銭

 7包装、荷造運搬費三〇六円四九 レッテル代二円五十銭、王冠代三十五円五十銭、箱材料費十円三十銭、空ピン空箱代二百四十九円七十四銭、自動車運賃八円九十銭

 8調査研究費   五円六〇

 9設備減価償却費二〇〇円○○

 10借地料   二五円三四

 11電灯料    九円四八

 12低利資金償還金二四〇円四八  五ヵ年間年賦償還金

 13雑費   四七円六九

  計  一、四一六円五二

 差引剰余金 三八三円三八

   この処分 配当金 三〇〇円  繰越金  八三円三八

  以上が粟田トマトの概要である。この頃の粟田新保はとにかく青壮年がそろっており、心を合わせて県下に例を見ない部落的生産の実行をなしとげたのである。

  当時、金沢市場で粟田トマトのマークをはったものは品質がよく、粒や色もよく、味もまた天下一品であったため、金沢市場を独占し、価格も三〜四割方高く売られた。後日、県下のトマト生産者は、粟田のトマト名を入れて販売を有利にしたということをきいて、苦笑させられたのもその頃であった。

  もちろん、それまでになるには宣伝と広告に並々ならぬ苦心と努力がはらわれたことはいうまでもないのである。他の農家からうらやまれる農事活動であり、粟田トマトとともに富奥村の名も広く知られていった。これは決して誇大に記したのではなく、当時を知る人達でも、いまなおなつかしまれているのである。当時活躍された青壮年のほとんどは現在、故人となられた。

 

[part4] part5へ >>




 ▲ 1:第一節 経済更生の遠因と動機 2:第二節 経済更生村に指定 3:第三節 経済更生計画樹立 4:粟田トマトの栽培と加工場 5:第五節 上林の共同養鯉場 6:野菜園芸の共同栽培と出荷 7:第七節 農事改良組合の活動 8:第八節 改良和牛の導入 9:第九節 村の家(聖農修練舎)の誕生 10:第十節 経済更生持別指定村