[part1]

 

四、俚諺・俗信

==俚諺==

 

一 俚諺

 (アの部)

 虻蜂とらず(どれも失敗)

 青菜に塩(急に元気を失う)

 青田ほめるより馬のまらほめ(青田の繁茂は何の効もない)

 油うる(途中道草する)

 油ひく(贈賄)

 あまに火いける(一触即発の危険)

 仰むいてばり(自業自得、ばりは小便)

 朝曇り後はだか(朝曇りは後晴れる)

 足ャ地につかん(落ち着かない)

 秋がます嫁にくわすな(秋かますは美味しいことを強調する言い方。または秋かますは卵を持たんからその縁起をいう)

 逢うての学(経験第一)あんごアかぎにかかる (貧乏して食うことも出来んようになる)

 あまへ足かける (無理な行い)

 あとのもんに福 (遠慮や謙遜は美徳で陽報がある)

 飴と思うても、なめりゃ甘い (分っていても甘言につられる)

 飴食わす (飴は甘言、贈賄の意)

 兄だら (総領の甚六の意。長男は努力がたらない)

 ありやあるりょに (手元にあると軽々しく消費する)

 あしたはあしたの風がふく (取越し苦労を戒しめる意)

 赤子の手ねじるような (抵抗力が無く思うように易々と)

 朝起き三文の得 (朝起き奨励の意)

 鮎になるか うぐいになるか (その結果を見なければどう変わるか予測出来ない)

 尼さに金玉出せ (無い者に無理を強いる)

 悪女の深情け (言行相反して一致しない)

 あるがは嫌じゃし、思うがはならず (下句、とかくこの世はまゝならず)

 明日のくど食いに今日の水のみ (気早やな用心)

 あきない場七日 (相当かけ引きあって妥結には時間がかかる)

 青菜茹でるが男に見せるな (茹でると減るから気が引ける)

 あみだ笠ならさゝぬがましじゃ (無用の長物)

 足洗う (悪業や悪友からサッパリ手を引く)

 あかべア笑う (自分勝手な言い分をあざけ笑う)

 あうが別れのはじめ (因果関係の例)

 あじことばり (心配事ある者は、たびたび小便したくなる)

 (イの部)

 鰯の灰焼嫁に食わすな (秋かます嫁に食わすなと同意。鰯の灰焼きが美味しい事を男尊女卑と結んだ言い方)

 いどるもんなァ食い勝つ (ねばって無心を強いる者は結局得をする)

 言いわきァはごたえ (問答無用、無言服従)

 言わぬが花じゃ (隠徳こそ美徳)

 いい職人なァあわてん (自信満々の行)

 一生のグワチァ死にしな (生涯の評価は死期まで分らない)

 一生のへぎ出しゃ冥加 (生涯の節約は死後に寄付、奉納、献納として報いられる)

 一升の餅にも取り粉 (大も小も手数は同じ)

 痛いのに針 (不運が連なる)

 煎粉にしようか糊にしようか (物が少ない時、大切に用途を考える)

 いぐちも鼻歌、心慰み (相手が理解しなくても自らは慰む)

 いざりゃ山へ上るりょな (想像も出来ないような、無理な野望で捗らぬ)

 いやいや三杯 (口先だけの遠慮)

 いずみ編んたもんなァ担ぐ (発案者は最後まで責任を負う)

 板につく (よく馴れて無意識でも出来るように熟練する)

 犬も頼めば木登りする (下手でも頼まれれば一生懸命に励んで立派に出来る)

 煎鍋へ金玉落とすような (火急な慌て様)

 色とバクチほ思案の外 (思慮ある者でも悪業につい迷う)

 命只今、世は千年 (自分の一生は小さい、悠久の大義に生きよ)

 医者に取られにゃ坊主に取られ (生前医療費が少ない人は死後よく弔えよ)

 言うも良し、言わんも良し (言わなきゃ気の毒、言えばまた気の毒)

 (ウの部)

 馬の耳に念仏 (馬耳東風、どんな名言も理解できぬ者には効無し)

 馬にャ乗ってみィ 人にャ添うてみィ (つき合わねば本当に分らん)

 熟んだ柿潰れたとも言わん (一言あるべき時にも言わない無口者)

 生みの親より育ての親 (生むより育てる方が大切)

 後足で砂かける (最後の際に恩を仇で返す)

 うそは盗人(ぬすと)の始まり (嘘言を戒しむ意)

 牛に引かれて善光寺参り (良友に引かれて良くなる)

 売り言葉に買い言葉 (相手の出様によって予期しない反抗をする)

 瓜のつるにゃ茄(なすび)ゃならん (親が良くなけりゃ良い子が出来ない)

 内股こう薬 (双方の言いなりになる)

 うそも方便 (うそは思いが使い様によって良い場合もある)

 馬の糞の川流れ (互いに意見が一致しないで別れ別れになる)

 (エの部)

 絵にかいた饅頭 (実行出来ない価値のない理想案)

 遠慮ひだるし、伊達寒し (遠慮すりゃ空腹、伊達者は薄着で寒い)

 江戸の仇ャ長崎 (予想もしない所で反撃される)

 縁の道なら遠の道 (如何に遠い他国人でも縁の道は不思議だ)

 (オの部)

 大水、手で堰(せ)ぐ (多勢に対し小勢で防ぐような無駄なこと)

 大風に灰まく (害あっても何の効果もない)

 大取りより小取り (兎と亀の話の如く微力でも根気)

 おやじの足跡こやしになる (田作りは雇人まかせではよくない、主自身の働きが大切)

 親方金すじ (同じ所作でも格違い)

 大樋の蚤殺し、出町の馬殺し (人の噂も遠くへ伝わると大変大きくなる)

 大人死んでも村たえぬ (次々人物が出てくるから案じなくてよい)

 男やもめにうじがわく (男寡は身の始末が悪く汚ない)

 親しんぐり子しんぐり (親の目、子の目で自然見習う)

 お茶にも屋根葺きにも (場合、場所を考えず何日も同じ所作や振舞いをする)

 おんばさの給金 (だんだん下がる)

 女後家さに花が咲く (後家には誰でも目をつけあらぬ噂の花が咲く)

 おそ出の早上がり (怠け者の仕事)

 おねばで顔洗うよな (あまりハキハキしない話ぶり)

 男敷居をまたげば七人の敵

 男のあやまり一生一度 (男は度々過失があってはならぬ)

 男四十は分別盛り

 おいそで十八、そばで六十 (遠くでは良く見え、近づくと欠点がよく見える)

 恐ろしもんなア見たい (案じられる人間の心理)

 親に似ん子ァ鬼の子

 奥歯に真綿着せる (腹立っても直言せずジリジリ顔色を見て巧言する)

 親の泣き寄り、他人の食い寄り (葬式に近親者は寄り集まって泣き、他人は寄り集まって遠慮せず食う)

 親の死んみにも会えん (非常に忙しくて暇がない様子)

 (カの部)

 烏を白いと言う (無理法外な横車で押し切る)

 稼ぎ貧乏 (どれだけ稼いでも抜け穴があるから常に貧乏暮らし)

 川上三寸 (川上ほど優先権があるから叶わない)

 可愛さ余って憎さ百倍

 がんな食わなァししゃ食う (一方で無理すると必ず他方で失敗する)

 かたわ智恵付く (身障者は体が不自由な分だけ知力で努力する)

 片方聞いて源氏なし (双方の言い分を聞かなきゃ正しい判断出来ない)

 勝手つんぼ (都合の悪い時だけつんぼになるのは勝手すぎる)

 垣といさかい一人でできぬ (喧嘩は垣と同じく相手がなけりや出来ない)

 かり末代 (当座の間に合わせで作ったものが遂に永久のものになる)

 鳥ァ処引き (烏と同じく人間も自分のグループの味方をする)

 亀の甲より年の功

 髪結いのざんばら髪 (葱売りゃ赤薬と同じ意)

 (キの部)

 きつねに添う赤犬 (よく似た者同志)

 木に竹接ぐ (不似合い)

 ぎゃろ草も花盛り (卑しい女でも年盛りはやはり美しい)

 器用貧乏 (何んでも器用なものは一方的に打ち込まぬから貧乏する)

 聞けァ聞き腹 (自分の悪口も耳に人らなきゃよいが聞いたからには腹が立つもの)

 気は心 (気持ちはその人の本心を表わす)

 気やァきいて間ァ抜ける (よく人の気づかぬ事に気づく者は大事な要点を忘れがち)

 気ちがいに刃物 (便利な刃物も使う人により大害にもなる)

 義理とふんどしゃかかなならん (世渡りに義理の心は大切)

 (クの部)

 苦しい時の神頼み (調子のよい時は神仏を忘れ、苦境に陥ると神頼みする)

 口先上手の行い下手 (言行不一致)

 口八丁、手八丁 (口先も手先も上手な人)

 くらがりに物さがす (非常に非能率的なグズグズした行動)

 くらがりから棒出す (突然な仕打ち 突拍子な発言)

 くらがりに糞踏んだ様な (ハキハキしない意気地なし)

 食わず嫌い (よく聞かずに固い判断をする)

 暗い家にゃ金たまる (明るく物がハッキリ判断出来ると出費が多い。または欲心が多いと金は溜まるが家族の心が悪く家の中が暗く感ずる)

 くさり縁 (あまり得にならぬ縁故関係)

 観音ゲス喰らえ (少しの遠慮もない平気な言動)

 食わず飲まず (非常な節約)

 (ケの部)

 駄屋の鋸 (往復とも切れる。荷物の往復運搬、売り買いとも利あり)

 下戸の肴食い (酒飲まずは先に肴を食い尽くす)

 (コの部)

 ご西向く (死ぬこと)

 乞食ゃお斎(とき)につく (ご馳走など飛びついて食うこと)

 乞食の子、三年たちゃ三ッ (いつまでも人を見下げるな)

 ころんでもただ起きん (失敗しても何かを得るような)

 昆布一さき目の色かわる (少しの甘言や贈賄で感情が移る)

 乞食三日すりゃ止められん (苦労しないで堕落するとそれが癖になり易い)

 米糠(こんか) 三合ありや養子に行くな (少しでも資産があったら養子に行くな)

 ご幣(へい)かつぐ (迷信などに心を寄せる)

 声美人画乞食 (声のよい人に美人はない)

 乞食のいさかい暇かまわん (仕かける喧嘩は相手になるのに閉口する)

 乞食しても所の乞食 (貧乏しても出身地は食い易い)

 小姑一人、鬼千匹 (小姑一人でも嫁は非常に苦しめられる)

 子をすてる藪ァあっても、身すてる藪なし (苦境に堕ちた際、子をすてても自分の安楽を望むように人間は薄情なもの)

 (サの部)

 さわらぬ神にたたりなし (何にも手出ししなければ悪い反動もない)

 さいの河原 (どれだけ努力しても次々崩れてゆく)

 三ぴつ揃う (よい条件が全部揃う)

 猿芝居 (何でもかんでも人の真似ばかりしている)

 猿も木から落ちる (如何なる達人でも油断すれば失敗する)

 (シの部)

 知らぬが仏 (知っていないから悪心が起きない)

 死人にロなし (反抗出来ない者に皺寄せする)

 死ぎしなの念仏 (常日頃怠けていて窮地に及んで如何に努力しても効なし)

 死んだ乙女が男なら (過去の愚痴事)

 尻釘を打つ (話が後もどりせぬよう念を押しておく)

 尻と口と合わん (言行不一致、前言後述不一致)

 尻の下に敷く (軽ベつしたり馬鹿にする)

 下に口なし (権力ない者は何を言っても理論が通じない)

 慈悲たれりゃ糞たれる (同情にあまえて気まま勝手をする)

 死ぎしなの剣 (人から馬鹿にされている者でも最期の一言は人の心を刺す)

 (スの部)

 雀百まで踊り忘れん (生まれつきの根性はいかに年老いても消えない)

 脛(すね)に傷ありャ高足ふむ (腹に何かやましい事があれば必ず動作に現れる)

 住めば都 (自分の生地はまことに結構で便利な楽天地である)

 (セの部)

 線香もたかず 庇もたれず (良い事も悪い事も出来ん無芸無愛想)

 せめて乙子の二十まで (乙子は末子、親が子を思う心はいつまでも切りがない)

 (ソの部)

 そうけで水汲む (どれだけ働いても抜け目があっては無駄骨である)

 そろばん合うて銭足らず (金銭の不足はし易い)

 そば蒔きは、行きと戻りで大違い (何事も始めは吟味するが後は粗雑になり易い)

 (タの部)

 棚からぼた餅 (棚を開けりやぼた餅がすぐ口に入るように万事思い通りになる)

 頼まん衆生は助からん (誠意を捧げない者は神仏も致しようがない)

 立ったもんなァ親でも使え (何んにでも便乗する)

 高い所へモッコ持ち (金持ちの所へ金が集まる)

 抱いてやりやおんぶする (情をかけりや増長して有難味を忘れる)

 立てり百貫 (立って支えるのは実に強い)

 ダラの一つ覚え (馬鹿者はその場だけの一方法で臨幾応変や融通はきかない)

 ダラの三杯汁 (汁は三杯吸わないのが礼儀)

 ダラ山中 (山中温泉の湯は適温だから馬鹿者はボンヤリ入浴して無神経)

 他国坊主に村博士 (所の者は博士でも偉く見えず、遠方他国の者は生臭坊主でも偉く見える)

 大木の切株踏んではならぬ (大木に精霊があるから踏んではならない、罰があたる)

 ダラと煙りゃ高へ上る (馬鹿者は相手が謙遜すると増長して上座まで上る)

 ダラにつける薬ァない (馬鹿はどうしようもない)

 ダラは世を持つ、世帯持つ (世の中は賢い者でも世帯は上手にもてない)

 たたけゃ埃りャ出る (どんな良い人でも細かく調べりゃ少しは欠点も出る)

 たら汁と雪道ゃ後がよい (前車の轍を踏まぬのが賢い処世術)

 短気は損気 (短気者は必ず損をする)

 (チの部)

 ちょうわい腹七日 (おちょうわいにはご馳走があるから沢山食う)

 知慧ゃコブラへ回る (浅智慧、猿智慧の者)

 智慧貧乏村宝 (智慧者は世間に貢献するが自分の家の経済が下手で貧乏なもの)

 ちょうどよいことァ京の町でもない (何事もちょうど満足することはできないもの)

 茶柱立てばよいことがある (茶柱は滅多に立たぬから)

 ちょっと出の長すけ (他家で長座するものは必ず軽卒に家を出て行く)

 地獄から朝食(あさひ)食わずに来たような (不足に窮した者が卑しい振舞)

 ちょっと来いにァ油断ならん (ちょっとと前置きする場合は何か重要問題がある)

 提灯(ちょうちん)持ち (人の言行の先導案内者)

 (ツの部)

 梅雨南西風 (ひかた)に俵あめ (梅雨期の南西風は豊年の前ぶれ)

 爪ぎしにやいと (爪際は一番灸であつい所、厳しい折檻をする)

 爪が長い (欲深いことを考える)

 つばくろ一年子 (くちばしがまだ黄色、素人くさい)

 (テの部)

 手の内の丸薬 (自由自在になる)

 手と口ァ仲がよい (ほしい物が近くにあるとすぐ結合する)

 天人ビードロ逆さにした様 (絶世の美人の様)

 手が長い (盗人根性)

 (トの部)

 年とっての夫婦(めおと) (年寄の身は不自由だから夫婦の助け合いが一層痛感される)

 取らぬ角力に勝つ (偶然にも苦労せずに報いられる)

 取るに溜まらぬ、使わずに溜る (金はとるより消費節約で溜まる)

 取ったか見たか (取るなり自分の物にする)

 どうらくもんの一時仕事 (怠け者は一度に精出すが長く就かない)

 泥ぼうで押すような (大問題に対し貧弱な対策で臨む)

 問いに落ちず、語るに落ちる (尋ねられても答えないが、自分で話している間に言ってしまう)

 豆腐に鎹(かすがい) (どんな強い意見や折檻でも効き目がない無神経な馬鹿者)

 土用北西風(あい)に桟俵(さんだわら)作れ (土用の北西風は豊年だ)

 冬至の雪ァ春まで消えん (冬至の頃の積雪は大雪の前ぶれ)

 友達三代 (三代は友達として交際出来る)

 隣の貧乏、雁の味 (隣同志の悪い面、他人の貧乏を知り喜ぶ)

 寅男に卯女房 (こんな夫婦は非常に幸福な暮らしができる)

 年寄の息災、ソレャ面倒 (若い者は一層仕事に精出さねば)

 (ナの部)

 無くて七くせ (誰でも必ず何かの癖があるもの)

 無い腹をさぐられる (全然覚えのないことを疑われる)

 泣く子と地頭にァ勝てん (泣く子供と地頭にはどうしても負ける)

 無いようで有るもんなァ借金

 鉈でひげそる (非常に無理なことを強いる)

 撫でてさらえる (表面は甘言を遣い、裏で私腹をこやす悪徳)

 (ニの部)

 にっそり仏のじょうだんこわし (実直で通った人が案外なことをする)

 糠(にか)の崩れるのもおかしい年頃 (娘盛りは何んででも笑いを誘う)

 (ヌの部)

 ぬれ手で泡 (労せずして得する)

 盗人の高念仏 (悪人ほど人前でわざとらしく念仏を唱える)

 盗人に追い銭 (むさぼりとられた者に更に恵む)

 糠に釘 (豆腐に鎹と同じ)

 (ネの部)

 寝る子は育つ

 ねずみの糞 (何んにでも手出しする人)

 ねぶか売りゃ赤葉 (他人事の世話はよくするが自分のことは放任する)

 ねた火箸も起こさん (怠け者の例)

 ねまり牛 (丑年生まれの二、三男や女は家に座りこんで長男を失うようになるから嫌う)

 寝てみん先の夢 (妄想的取り越し苦労や楽天気分)

 (ノの部)

 後の雁より現(げん)たの雀 (後に美味しい雁食わす約束など当てにならない、一層雀でもよいから今すぐ食わせ)

 (ハの部)

 歯に絹きせる (巧言令色で悪い本意を覆う)

 白山で手洗うたよう (心に懸る雲が晴れたようにさっぱりした気持)

 白山下の後生願わず (近くの恩恵は感じ難い)

 鼻つまみ (世間の人から嫌われる)

 八文(もん) (低能老)

 ばくちの総ざらい (勝ちに乗じて一座をわがもの顔に威張る)

 腹で茶わかす (顔表情で笑わず心の内で冷笑する)

 腹芸 (言動でなく心の内で策動)

 初物食い (何んでも珍しい事に手出しし長読きしない)

 (ヒの部)

 人の噂も七十五日 (噂話も自然日を過ぎると消える)

 人の提灯で明りとる (他人の行動に便乗し利を得る)

 百姓人まね (百姓同志は職柄、自然的条件は同じいから良いにつけ悪いにつけ人真似が多い)

 百姓の五斗いきり (少し豊作だといきりたって無駄使いする癖)

 百姓と灰俵 (たたけば少しは出る。税金をしぼりとる法)

 百年目の大年 (一生の間に滅多にない良い事に出会う)

 人の口にァ戸ァたたん (人の噂は止めようがない)

 七百二十日 (一年を二倍に働く人)

 百匁(め)かたに編笠一かい (破産の時、債権者の返済分が僅少な例)

 一口足らねほ千口好む (もうあと一口の不足が、一層欲しがる心をつのらせる)

 貧乏、質に置く (質に入れる物もない貧乏の風刺)

 膝節ァ他人 (膝節はいつでも冷たいから)

 冷かい餅、嫁に食わすな (うまい物だから嫁に食わすは勿体ない)

 ひいきの引きだおれ (ひいきし過ぎてかえって逆効果になる)

 (フの部)

 深靴で太鼓打つ (万事調子よく運ばない時の言い分)

 ふんどし担ぎ (権威者の従者)

 太火たく (ぜいたくな生活、身分不相応の生活)

 冬の道と鱈の汁 (後ほどよい)

 (ヘの部)

 下手な考え、休むに似たり

 返事ャ軽く、尻ャ重い (返事は如何にも軽いが、行動がにぶい)

 下手な鉄砲、数打ちャ当る (下手でも根気よくせよ)

 平時ャぶらぶら、もんベァしっかり (常日頃ぶらぶら怠ける者は休日は必ず欠かさない。怠け者の例)

 陛下の事も陰沙汰 (陰でなら陛下の噂でもする。陰の噂を気にするな)

 (ホの部)

 法華の太鼓だんだんよく鳴る (調子のよい言動)

 ボンのくそァ悪い (運が悪い)

 ポンのくそ洗う (悪運を断つ)

 仏草 (稲の尊称、栽培に上手下手の差が少ない)

 法力 (宗教を背景にすると大きな力となる)

 ほおかむり (面目を失した時、顔向け出来ない、面子を避ける)

 (マの部)

 真綿で首しめる (直接攻撃でなく遠廻しにじわじわ攻撃する)

 負け角力の褌 (負けても執念深く喰い下る)

 豆打ちャ三日いさかい (豆打ちすると広く散る、掃いても残るから口喧嘩となる)

 (ミの部)

 水さす (邪魔をする)

 水がふそう (その土地に生活が適合する)

 みみずァ泥食ったら何食う (際限のない心配の風刺)

 みみんじゃこも魚(とと)まじり (みみんじゃこはメダカ、貧弱でも人だから交誼を結ぶべき)

 見りャ見ぼんのう (見れば自然的に欲しいと思う心が出る)

 水くぐり (行方をくらます)

 耳ャ肥える (物事をよく聞いている者は適度の知識がつく)

 見る目ャある (評価判断力が強い)

 三つ子の魂百まで (幼時の個性は一生消えない)

 見よう見真似 (常に見ていると自然それを習得出来る。善悪両方に用いる)

 (ムの部)

 虫のよい (調子のよい)

 虫が長い (堪忍強い人)

 虫も殺さんような顔 (常日頃実にやさしく実直な人が案外な事をする場合)

 娘三人、身代つぶす (娘三人もいたら財産もなくなる。嫁入じこみの大儀をいう)

 村にゃ村姑 (男女をとわず一家の嫁姑の如く、村の中でも新参の者、古参の者がある)

 棟見て鳥やとまる (寄付集めや乞食など、その家の棟の構えを見て寄ってくる)

 (メの部)

 目で物言う (言葉でなく目で意志を表示する)

 目も口もあかん (物の判断も行動も常識外の者、分別をわきまえぬ者)

 目の上のこぶ (非常に邪魔に思う存在)

 夫婦(めうと)のいさかい犬もくわん (何の価値もなく問題にならん)

 女郎と塩もんなァすたりァせん (女と塩漬け物は必ず廃物にならず用を足す)

 めんどりが歌う (夫唱婦随の反対の姿)

 盲に提灯 (何の役にもならん。猫に小判と同じ)

 (モの部)

 蒙古ァ来る (子供をおどす語)

 股(もも)よりこぶら (目的より手段に心を引かれる。下手な智慧)

 持ってくれ、かいてくれ (自分一人で取捨できない困難)

 貰いもんの裾分け (貰った物をまた人に分配する親切心。または自分が損をしない横着者)

 持ったが病 (持った財産の処置で苦労をする)

 股引に糞 (自分にまつわりついた難題に苦しむ)

 持ったら放さん (収入だけを考え支出を考えない強欲な蓄財法)

 (ヤの部)

 闇(やみ)に鉄砲 (何の効もない無駄ごと)

 火傷にやいと (弱味につけこまれ二重三重に苦しめられる)

 遣り身に取り身 (権力者と弱者の関係、婿方と嫁方の関係)

 瘠(や)せの大食い (瘠せた者はど大食する。また大食だから肥えない人)

 安いもんなァ高うつく (安もの買いの銭うしないと同意)

 安うけあいはへんがいのもと (軽く受合う者は必ず解約する)

 藪突いてへび (利を得ようと手出ししたため反って邪魔が現われ損をする)

 役ならかんしょの役でも (何でも役ならすべて欲しがる人、役なら死人焼でも)

 山せァ三日吹く (北東の風が吹き出すと三日ほど吹き続く)

 病で死げん (病と寿命は別)

 やせばいがむ (貧乏すると人間は愚鈍になる。貧すりや鈍するに同じ)

 (ユの部)

 雪垣安心 (苦しい時は信心あつく、楽な時無くなる)

 湯楽 (温泉場の湯治は唯一の慰安)

 (ヨの部)

 蓬(よもぎ)猫と嫁にァ白い歯見せるな (嫁には常に厳しく当たれ、心をゆるすと増長する)

 嫁は下から (嫁を取るなら婿の家より低い身分から迎えるとよい)

 夜糞手で受ける (始末に困る)

 欲と算用 (身勝手に都合つける)

 斧(よき)持ちゃ鉞(まさかり)で向う (勝ち気な反抗)

 嫁の日暮らし (嫁が実家へ行くと日暮まで帰らない)

 (ロの部)

 六貫かずく (死ぬこと、火葬の時軽炭(三貫)二俵のせる)

 (ワの部)

 藁人形にも衣装 (なんでも衣装飾りすりゃ立派に見える)

 若い時の苦労ァ買うてでもせい (若い時の苦労は身の為だから進んで求めるべきだ)

 わがが糞ァ臭うない (自分の欠点は気にならない)

 吾身はめるは一のダラ (謙遜心のない者は最大の馬鹿者)

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富奥郷土史