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==昔のことば==

 

六、昔のことば

 

一 呼びかけ応答用語

 立場の相手関係         呼びかけ語         応答語

 親が子に対して         ナ、又はナナ        オイ

 子が親に対して         ノ、又はノノ        アイ

 夫が妻に対して         ナナ又はオイオイ      ウン

 妻が夫に対して         ニニ            イー

 主人が下男下女に対して     ノノ又はナナ        ウン又はオイ

 下男が主人に対して       ネネ            エー

 下女が主人に対して       ニニ            イー

 他人同志男の呼びかけ      ネネ            オン、ンオ、ウン

 他人同志女の呼びかけ      ニニ            ヤ(短かく)

 他人の近しい間柄        ノノ又はナナ        ウン又はオイ

 相手を見下げての場合      朝の挨拶の時        アイ

 同等の男子間の場合       又は通りすがり       イー

 一般的女子間の場合      の人からの言葉かかり   イーイー

 

二 対話例

 早春の田んぼ道で(太助と安吉)

 太助 安まかいノー、きァンまい日じゃノー。

 安吉 イー、じょずに、いい日並になってけっこやノー。

 太助 あのとり、あまつぼァ(南西の空) いいさかに、めったなァことァないわいノ。

 安吉 なんにし、ことしゃいさいこと雪ゃふっとたもんやさかい、どうなるこっちゃと、あじことしたけんど、やっぱり、りくつなもんじゃ、時節ァくりやノー。

 太助 まこっちゃ、じょずなもんじァー。そりゃそーと、そこにゃかっつきゃすんだがか。

 安吉 おいノ、ちょーどこないだの日曜ゃふりァがりで、若いもんどらはりこんで、ンなちょーつけたがじァ-。

 太助 そりゃぐあいいかったのん、うちにァまだたんとのこっとるがじァ、せんどの旗日に、ワシァー、やかまし言うとったがやけんど、うちのあんかなんじゃら会社のもんな、アノほらいボーリングたらいうもんすっさかい、こいって電話かかったら、ほったらかいて、とんでったわいノー、そしてやくちゃんない、遊んできたあぎくに腕ヤ痛いたらなんやら言うてけつかるさかい、あほらしてハヤ。

 安吉 そうかいノー、そーりゃいとっしゃ、じょうじょう力仕事になりんもんじゃさかいに、いやといえん。

 太助 やっぱしワシャしいななるめイー。

 安吉 ほんなら、もりせんと、しなしなーとさっしゃいノ。

 夏の草とりよだいがり時(一家の騒ぎ)

 (姉が、いろりのふちで、ランプのホヤ掃除している。弟が入ってくる)

 姉 ありゃどこにとぼけとったがや、アリー、川で浴びとったナー、はいてやくちゃんない長いこと浴びとったがやナー、みーマ、くちうらどす黒うなっとるがいや、しまいにおこりゃつながるろー。

 弟 ワシばっかりんないもん、ンな浴びとったもん。

 姉 ほいから、わりゃ瓜やから瓜盗んで食たやろー。

 弟 ほんでもひもじかったもん。

 姉 だら!ありゃはつもんの瓜やがいや、よだいがりにとーとに言うわいや、ほいたら叱られるゾー。

 弟 エー、たーたのちゃベこさ!

 (姉の肩をたたいたのでホヤが落ちてチャリーンと割れる)

 姉 アリャー、さあーしらんゾー、まどいやー。

 弟 わりゃぼさっーとしとっさかいやが。

 姉 ほんないゾ、わりゃ背中たたいたさかいやがー。

 弟 ほんでも、あんまりつべこべ、こんじょわるこかすさかいや。

 姉 なんやって?わりゃわるいがやゾ、わるさばっかししとって、よさるとーとにンな、ゆーわいや。

 父 わるら何やかましいうとるがいや、アリャー、ランプのホヤ割ったナー。

 姉 おいノ、ぼんのがきやゾー。

 弟 わしゃなーんしらんゾー。

 姉 なーむゃゾー、ぼんのだら、わたいの背中たたいたさかい落ったがやゾー。

 父 ぼん!なんでそんなことしたがやい。

 弟 たーたナ、せいもんことばっかしいうもん。

 姉 アノー、ぼんな瓜やから瓜盗んで食たさかい、叱ったら、こんなことしたがやゾー。

 父 フーン、ぼんのがきゃまたわるさしたかい、おどレ!、そんなきかんもんナ蔵へ入れてやる。

 (父、追い回す、ぽんナ泣き泣き母にしがみつく、父がつかまえると、いっそう大声で泣き立てる)

 母 ソーレみろー、アーおとろっしゃ、蔵ん中まっ暗で、おとろしばきゃ出て、頭にかみつくゾー、アーおとろっしゃ、あんまりもさいさかいやー、サー『かんにんかんにん』って、とーとにあやまろ、あやまろ、サー、こんつぎからかたーいもになるさかい、かんにんしてやってくたんシ。

 (ぼん、泣き泣きカンニンヤーカンニンヤーと叫ぶ、父手をはなす)

 父 こんつぎからむさいと、本当に蔵へ入れるがやゾー。(父は母に向きをかえて)

 オイ、はよらとねんねに乳飲まさんかい、やかましてどうもならん。

 (母、ねんねをつぶらから上げて、おしめを換えながら)

 母 ぼんー、もっとかたいもんにならんとだちゃかんがやゾ。

 父 (姉に対して)足にたっとあんないゾ、いいがに掃いとけや、そいからーさんよもんさへいって新しいホヤこうてこいナー。

 (再び母に向って)アー、腹へった、はようーままにせんかいやー。

 母 イーイー。

 稲刈時の立ち話(百姓乙の刈田の鎌てを通った百姓甲)

 甲 ンな大そやノー、どうやい、ンまそいかい。

 乙 アイ、今年ァねた割におぞないかノー、みよしゃでかいことンめるがいノー。

 甲 そりゃ欲目じゃが、こんな田ようないって、どりゃーいいってがいノー。

 乙 まンそうーかノー、お前ンとこの田どうーやいノン、にょ見るとでこーンめるがノー。

 甲 わしんとこか? そうやノン、きらば積ん時ァちょっこし重とう思うたけんど。

 乙 そうじゃろー、どうやいノー、八合のふげどんどでるりャろうー。

 甲 五助さにゃ摺ったら一升ちょっとあったといノ。

 乙 そりゃうわさでないかいノ。

 甲 なんせ、うざくらしいほどンまそかったといノ、こん田もそんどどあるりゃろうー。

 乙 おいノー、ほかへふけらがすほどたんとありゃいいけんどノー。

 茶のん話(他家の妻甲と、その家の妻乙と)

 甲 しんどもはや、うちのまァござってノーン、いろいろおよばれして、雑作になってニ、こりゃほんのちょっぴりゃけんど。

 乙 なんでいニー、ありゃー、のびーにもろうばっかっしゃ、どしたもんやい。

 甲 そんなこというだけないがヤー、うちのにゃーにゃんとこにきんの嫁取りやったがで、もったがヤー。

 乙 そりゃおめでたいがやニン、どっからござったがやいニー。

 甲 おいニ、在所からヤー、よー親も娘も気心のしりた家やさかい、そんなきりょァいいってこともないけんど、ち

 いちゃい時から、まずめーな娘じゃったとイニ。

 乙 そうかそうか、そりゃいかったニン、うちにもそろそろ話出さんなんがや、またりくつながみつかったらたのんぞいニ、まん茶一ツ。

 甲 ごもったいニ、いまだなんもかんも済んでノ、報恩講様いっちゃらニン。

 乙 どうせ御七夜じぶんじゃろエン、今年ァ他所(たしぇ)の方等も参ってもろオっと思て知らいてあるがや。

 甲 ほーか、ほんならそんときまでに糯米搗かんなんし、ばいぎもたーんとこっさいんなんニイ。

 乙 そいていりりにあたっていんざらーとお聴聞しょまいかいニ。

 お見舞(隣りのあんさが見舞に来て婆さんと応答)

 隣 こんニー、しもましたか。

 婆 イーイー、隣のあんさまきー、サー入って下(く)たんし。

 隣 いらい夜きりになっと冷えこんノー。

 婆 おいニー、またこんやも、しみるかニン。

 隣 ウン、わしゃいましがた、じゃーまに聞いて、きまつぶいて来たがやけんど、こんの爺ァあやまちさしたってノン、どいこっちゃいノ。

 婆 アラーいとしべに、よう来てくたんした。

 隣 どんなあやまちゃったいノー。

 婆 おいニ、ひりおんに、ンなのしらんまに納屋のあまへ上ろうとしたら、梯子がずって、てっくりかやってノン、したにおいてあったくらかきに、どしょばらかっつけたがやとこと、そしたら、ひといきいきゃ止って、ぶったおれとらしたがやとこと。

 隣 そうーか、そりゃひどいみにあわしたがやノン、今でも大ぶひどいかノン。

 婆 おいニ、まん、年(とし)が年ゃさかいに、旦那様に見てもったけんど、あたァへしなかろうと言うとれた、もったいしゃ、ちょっこしもいのきりんもんやさかいニ、いわったわいニー。

 隣 年のわんにきっつい人やったがいノ、せっかく養生して早よ治ってもらわんなんノー、ほんな、大じにしてやってくたいノ。

 婆 お前様、ごきみっさまなニーン。

富奥郷土史