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第十五章 厚生と福祉
(第七節 衛生組合)
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==第七節 衛生組合==

 

第七節 衛生組合

  医療施設のとぼしい明治初年頃は、悪疫や伝染病が流行し、非常に若死している。結核などもその頃は不治の病気とされていた。

  各部落では伝染病やその他の病気の予防と治療の心得について普及につとめた。明治二十五年頃から各部落に衛生組合をつくって、規約を決め悪疫の流行などの予防につとめた。また、衛生組長は大掃除の検査を駐在所巡査とともに回って検査し、春秋二回の大掃除には不心得な家に大掃除のやり直しをさせる権限もあった。衛生組長の門には必ず「衛生組長」の木の門札が掲げてあった。

 富奥村衛生組合規約

 第一条 本村内各字区ヲ分画シテ左ノ二十三組合ヲ置ク

   字中林ノ内 三組合 字下林ノ内 四組合

   字太平寺ノ内一組合 字藤平田新ノ内一組合

   字矢作ノ内一組合 字藤平田ノ内一組合

   字三納ノ内一組合 字上林ノ内 二組合

   字上新圧ノ内一組合 字下新圧ノ内一組合

   字末松ノ内 二組合 字粟田新保ノ内 三組合

   字清金ノ内一組合 字位川ノ内一組合

 第二条 各組合に組長ヲ置クモノトス

 第三条 組長ハ各組合ニテ選挙シ其人名ヲ村長ニ開申スルモノトス

 第四条 組長ノ年期ハ二ヵ年トス

      但シ満期後再選スルコトヲ得

 第五条 組長ハ組合内ニ履行スベキ事項ノ斡旋及取締ヲナスモノトス

 第六条 組長ハ各誉職トス

      但シ組合内ノ協議ヲ以テ適宜報酬ヲ与へルコトヲ得

 第七条 組長ハ衛生組長ト記シタル標札ヲ門戸二掲ゲ置クモノトス

 第八条 組合内ニテ履行スベキ概目左ノ如シ

 一、下水溝ノ完備セザル部分に於テハ必ズ之ヲ設ケ汚水ノ疏通ヲ図ル事

 二、従来ノ下水溝ニシテ流水ノ効ナキ分ハ之ヲ填減シ更ニ適当ナル溝渠ヲ設クル事

 三、流下流水溝ハ時々洒掃浚渫疎通シ不潔物又ハ土泥汚滞セザル事四、常ニ井辺ノ不潔ヲ掃除シ又毎年一回以上井中ヲ浚渫スル事

 五、家宅内外便所及塵芥ノ掃除ヲ怠ラザル事

 六、井泉ノ周辺ニ於テ襁褓(オムツ)便器等不潔ノ物品ヲ洗ヒ及魚鳥ノ骨腸ヲ棄ザル事

 七、井戸ノ設ケナキ部分ニハ構造堅牢ナル井戸ヲ設クル事

 八、ヤムヲエスシテ河水湖水等ヲ飲料ニ供セソト欲スル場合ニハ簡易ナル砂濾装置ヲ設クル事

 九、飲料ニ供スル河川ニ於テ襁褓(オムツ)便器等不潔ノ物品ヲ洗ヒ又ハ魚鳥ノ骨腸塵芥等ヲ棄ザル事

 十、不潔ナル水流中ニ於テ食品及食器衣服等ヲ洗濯セザル事

 十一、井戸ノ周辺並二便所ノ損所ハ速ニ補修スル事

 十二、井戸水揚水装置ハ釣瓶仕掛ニテハ伝染病毒浸入ノ虞アルニ付漸次ポソプニ改ムル事

 十三、飲食物ノ腐敗ニ傾キクルモノ及不熟ノ果物ハ一切之ヲ販売シ又ハ購求セザル事

 十四、悪疫流行中ハ殊ニ飲食物等摂生上二注意スル事

 十五、悪疫流行中ハ多人数集合シ且宴会等セザル事

 十六、家内ニ伝染病二罹リタルキノアリト覚知シタルトキハ直チニ組長ニ通知シ医師ノ診断ヲ受クル事

 十七、悪疫流行中他ノ地方ヨリ来客若クハ帰宅シタルキノアルトキハ速ニ組長ニ通告スル事

 十八、種痘ハ初再三種トモ其期限ヲオコタラズ接種スル事

 十九、組合内貧困患者ハナルベク救療ノ方法ヲ設ヶ施療セシムル事

 二十、組合内ニ要スル費用ハ共同支出スル事

 二十一、組長ノ指示ヲ遵守シ又ナルべク衛生的談話会等ニ出席シ各自自衛ノ道ヲ会得スル事

 二十二、悪疫流行中病者アリタルトキハ直チニ医治ヲ請ヒ売薬及祈祷ノミニ依頼セザル事

 二十三、組合内ニ伝染病発生シ遮断サレタルトキハ組合ニ於テ外部ノ用向ヲ弁ズル事

 二十四、以上列記ノ事項ハ堅ク履行スル事

 第九条 組長ニ於テ取扱フベキ事項概ネ左ノ如シ

 一、衛生ニ関スル法律諸規則又ハ官署ノ命令等ヲ組合内ニモレナク通達シ且了解セシムル事

 二、時々組合内ノ各戸ヲ巡回シ規約ノ履行ヲ監視若シ未ダ履行セザルモノアルトキハ之ヲ諭シ履行セシムル事

 三、悪疫ニ疑ハシキ患者アルトキハ医療ヲ受ケシヤ否ヤヲ問ヒ未夕医師二就カザレハ其周旋ヲナス事

 四、悪疫アル地方ヨリ来客又ハ帰宅シタル者アル家ハ特に注意スル事

 五、伝染病アルトキハ患者ノ排泄物等消毒ノ注意ヲ与フル事

 六、移住者アルトキハ速ニ組合規約ノ条項ヲ示シ置ク事

 七、衣食住其他健康ヲ害スト認ムルモノハ之ヲ改良スル事ニ勉メ其意見ヲ村長ニ稟申スル事

 八、通俗衛生談話会ノ開設ヲ計画スル事

 第十条 一組合内ニ於テ行フ能ハザルトキ又ハ他ノ組合画一ノ方法施行ヲ要スルトキニ於テハ便宜教組合連合協議スル事ヲ得

 第十一条 本規約ノ改正増補ヲナシタルトキハ郡長ノ認可ヲ経テ施行スルモノトス

  大正五年の富奥村の村治一覧表の予算の中に伝染病予防費として三十五円、衛生費として十六円がある。当時の歳出予算総額は一万六千九百三円七十八銭であった。

 

 

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 ▲ 1:第一節 昔の治療 2:第二節 村の医療施設 3:第三節 村の医薬品 4:第四節 墓籍帳と避病院 5:第五節 産婆 6:第六節 伝染病対策と注意書 7:第七節 衛生組合 8:第八節 方面委員と助けあい 9:第九節 託児所と保育所 10:第十節 富奥診療所の開設 11:第十一節 生活用水 12:第十二節 富奥の里親